オプション・プラン

アップグレードプログラムEX、半額サポート for iPhoneの罠

※追記:
au(KDDI)は「アップグレードプログラムEX」の受付を2019年9月30日で、
ソフトバンクは「半額サポート for iPhone / Android」の受付を2019年9月末までに終了すると発表しました。

半額くらいで持てるなら超お得?――ちょっと待って!

スマホを同じキャリアで長期契約していてもメリットは非常に少ない状態が続いています。

 

そうした声への反応でしょうか、auでは「アップグレードプログラムEX」、ソフトバンクでは「半額サポート for iPhone / Android」というプランも始まりました。

 

ざっくり説明しますと、このプランに入って対象のスマホを48回支払いで契約すると、25ヶ月目以降に同じキャリアで機種変更する際、以降の機種代支払い(~48回まで)が免除される、という内容です。

ただし条件があり、

「機種変更後のスマホも同プランに加入すること」

「機種変時に旧機種は回収すること」

となっています。

 

同じキャリアで機種変し続けるなら、25ヶ月目で機種変すれば25~48回目の支払いが必要なくなり、総額半額くらいでスマホが持てる!

すごく安い!お得!

 

……という謳い文句なのですが、ちょっと待ってください。ここには大きく3つの罠があります。

 

1.非常に他社に移りにくくなる

48回支払いは月々の負担は確かに安くなるのですが、完済していない支払いがずっと残っている状態になり、他社に移ると残債を一括で支払わなければならない、というのが選択の重しになってしまいます。(後に改定、追記参照)

もうずっとそのキャリアから動かない、と決めていればいいかも知れませんが、今後他社が魅力的なプランを打ち出してくる可能性もあります。

現在は日中つながりにくいなど、大手キャリアに比べると利便性の低さが否めない格安スマホ(MVNO)も、これからサービス品質が向上してくる可能性もあります。

 

そうなった時にフレキシブルに動きにくい、というのがネックになります。

 

追記

当サイトにおいてかねてより問題点を指摘していた「アップグレードプログラムEX」「半額サポート for iPhone / Android」に関して、総務省や公正取引委員会もこれを「4年縛り」として問題視しました。

それを受けてau、ソフトバンクとも機種変更後に同プログラムに再加入しなければならない、という条件を撤廃。

ただし、25ヶ月目以降に指定機種の中から購入して機種変更すること、以下で解説する「回収した旧機種が条件を満たしていること」は条件のままになっていますので、なお注意が必要です。

詳細は文末に追記しました。

 

2.旧機種が故障・紛失の場合には20,000円かかってしまう

機種変以降の支払いが免除されるためには、「機種変時に旧機種は回収すること」が条件になっています。

ではその際、もし液晶割れやバッテリーへたりなど、故障があった場合はどうなるのでしょう?

 

実は旧機種が故障していた場合には、以降の支払い免除を受けるためには故障時利用料20,000円を支払わなければなりません。

(指定の保証サービスに入り続けていた場合は2,000円で済みます。)

これでは、以降の支払いが免除になっても、お得とは言えませんね……。

 

では、どういった症状が出ていたら「故障」と見なされるのでしょう。

 

故障時使用料が必要となる条件

ソフトバンクの場合は

「電源が入らない(スリープ(電源)ボタンが正常に機能しない)」
「各種ロック解除/初期化が実施されていない」
「製造番号(IMEI等)が確認できない」
「改造などメーカー保証外となる事由がある」

auの場合は

「電源が入らない」
「充電できない」
「電話機本体や液晶に破損や割れがある」
「メーカ指定箇所の水濡れシールに水濡れ反応がある」
「暗証番号ロック解除とオールリセットが実施されていない」
「製造番号が確認できない、改造などメーカの保証外となるような場合」

 

となっています。

 

全体的に、auの方が条件がカラいですね。

2年使っていて、機種変時には液晶が割れている、といった事態はそれほどレアなケースではありません。

返却期限(機種変更申し込み日の翌月末)までに旧機種が返却されてない(auでの検品が終了していない)場合も、支払い免除は無効になります…。

 

また万一、スマホを紛失して新たなスマホを契約する必要に迫られた場合には、旧機種をキャリアに返せませんので支払い免除特典は使えないことになります。

まったくないケースでもないですので、ちょっと怖い感じがしますね。

 

3.旧機種を返却しないといけないため、下取りに使えない

機種変時に旧機種を返却しないといけないため、次に新しいスマホに買い替え、乗り換えする際の「下取り割」には使えません。

 

2018年9月1日現在の大手キャリアの下取り料金例

ドコモの場合
下取り対象機種下取り価格(店頭/郵送下取り価格)
良品画面割れ品
iPhone 7 Plus33,000円9,900円
iPhone 726,000円7,800円
iPhone 6s Plus18,000円5,400円
iPhone 6s10,000円3,000円
iPhone 6 Plus10,000円3,000円
iPhone 65,000円1,500円
auの場合
下取り対象機種通常品画面割れ品(本体価格からの割引額)
①本体価格からの割引額②月額からの割引額
iPhone 7 Plus最大40,500円最大40,512円(1,688円×24回)最大11,880円
iPhone 7最大31,320円最大31,320円(1,305円×24回)最大9,180円
iPhone 6s Plus最大19,440円最大19,440(810円×24回)最大5,940円
iPhone 6s最大14,040円最大14,040円(585円×24回)最大4,320円
iPhone 6 Plus最大12,960円最大12,960円(540円×24回)最大3,780円
iPhone 6最大8,640円最大8,640円(360円×24回)最大2,700円
iPhone SE最大10,800円最大10,800円(450円×24回)最大3,240円
ソフトバンクの場合
下取り対象機種正常品破損品
iPhone 7 Plus45,600円(1,900円×24回)13,680円(570円×24回)
iPhone 731,200円(1,300円×24回)9,360円(390円×24回)
iPhone 6s Plus24,000円(1,000円×24回)7,200円(300円×24回)
iPhone 6s17,280円(720円×24回)5,400円(225円×24回)
iPhone 6 Plus17,280円(720円×24回)5,400円(225円×24回)
iPhone 611,400円(475円×24回)3,360円(140円×24回)
iPhone SE10,800円(450円×24回)3,240円(135円×24回)

 

2年前の機種なら30,000~40,000円、3年前の機種でも10,000円~20,000円の下取り割が利用できますね。

(液晶割れ品でも5,000~10,000円ほどの割引。)

 

他にも、旧機種が手元にあれば、様々な活用方法があります。

 

人気のスマホであれば自力で中古業者に売ることもできます。2年前のモデルなら、20,000~40,000円くらいで売れることも。

また、端末の状態が良いのであれば格安SIMカードを入れてサブ機や家族用にすることもできますし、極端な話、自宅Wi-Fiのみで使用するゲーム専用機&デジタルカメラとして手元に残しておく選択もあります。

「アップグレードプログラムEX」「半額サポート for iPhone / Android」を適用して旧機種回収となると、これらはすべて選択できないことになります。

残債支払いが免除になっても、果たしてどの程度お得なのか?を考える必要があります。

 

キャリアとしては当然ながら、なんとか長期に渡って自社に留めておけるように、と考えてプランを用意します。

しかし、消費者としては、なるべくフレキシブルに動ける状態にしておいた方が融通がききます。

 

ベストで言えば一括0円、0円でなくても一括払いなどで支払いを終えてしまっている方が条件のいい時に自由に動きやすくなりますので、縛り期間の長いプランは慎重に検討しましょう。

 

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2018年11月追記:au、ソフトバンク「4年縛り」を改定

総務省の「モバイル市場の公正競争促進に関する検討会」(座長:新美育文 明治大学法学部 教授)において「アップグレードプログラムEX」「半額サポート for iPhone / Android」(機種変更・端末下取りに伴う残債免除等施策)は問題点を指摘されました。

MNOによる機種変更・端末下取りに伴う残債免除等施策は、他社へ乗り換えると残債が免除されないため乗換えの障害となっている。

利用者にとってわかりづらいため説明に関するルールを整備すべきである。

また、利用者にとって不公平な仕組みとならないようにすべきである。

――総務省資料「モバイル市場の公正競争促進に関する検討会報告書」別紙1
第3章‐1.利用者契約における利用期間拘束について

 

また、公正取引委員会も同施策を独占禁止法に定める「私的独占」や「取引妨害」に相当しうるとし、説明の仕方によっては景品表示法に定める「ぎまん的顧客誘引」に当たる可能性を示唆しました。

 

こうした指摘を受け、ソフトバンクは2018年11月29日より、残債の免除条件から「機種変更後の同プログラムへの再加入」を撤廃するとしました。

au(KDDI)も、2019年1月16日より残債の免除条件から「機種変更後の同プログラムへの再加入」を撤廃すると発表しました。(改定された免除条件は2019年1月16日以前に契約したユーザーにも遡って適用されます。)

 

ただし、一定期間後に同キャリアで機種変更することはなお条件に残っているため、依然乗り換えへの障害はあります。

上で述べた旧機種回収時に故障や紛失があった際の条件も残ったままです。

 

なるべく安い機種に機種変して乗り換え、はできなくはないですが、その機種代と契約解除料(違約金)はかかるため、微妙なところです。

機種変更後、購入した機種をSIMフリー機として格安SIMにMNP乗り換えして運用、という使い方はできるかも知れません。

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